[ STE Relay Column : Narratives 053]
明石 沙弓 「背伸びし続けた、その先に」

明石 沙弓 / 早稲田大学経営管理研究科 / 日本マイクロソフト株式会社 

[プロフィール]大学卒業後、日本IBMを経て、日本マイクロソフトで勤務。大手製造業の顧客担当営業として、ITを活用したデジタルトランスフォーメーションの支援を実施。
早稲田大学ビジネススクール(以下WBS)では、夜間主プロフェッショナルコース・グローバル経営の平野正雄教授ゼミに所属。1年次は課題解決トレーニングを、2年次はアクセンチュアによるデジタル領域のトレーニングを実施中しつつ、人的成長にも焦点を当てる。
趣味は海外。大学時はアメリカの大学に1年間留学し、コスタリカ・アルゼンチンにも1カ月ずつ留学。社会人になった今でも休みを見つけては海外旅行に訪れ、これまで訪れた国は44カ国にのぼる。大学院の海外スタディツアーも積極的に参加し、これまでアメリカ(サンディエコ・シリコンバレー)、シンガポール、イスラエル、中国(北京・天津)に訪れた。

はじめまして、明石沙弓と申します。今回は「科学技術とアントレプレナーシップ」を受講し、その感想ということでお声がけ頂きました。この授業のシラバスには、「濁流に流されて溺れながら向こう側にたどり着いたというような感覚を体験する」「今まで学んできた総量以上には物事は理解できないんだ、ということを実感したい人へ」等々脅しの文句が並んでいましたが、こうして最後まで生き延び、STE Replay Columnに掲載頂ける機会を頂けたこと、大変嬉しく思います。

【科学技術とアントレプレナーシップ履修に際して】
はじめに、この授業は脅しフレーズがシラバスに記載されていることもあり、牧先生に初対面な中授業を履修する人はそう多くないです。既に牧コミュニティが形成されていて、そのレベル感を認識したうえで授業を履修する人が多いと思います。しかし、私は稀で、授業を履修するまで牧先生との面識がほとんどない状況でした。そのため、1年秋の授業を履修できなかった、イベントでも絡んだことがないという方にも、前向きに検討いただける材料になればと思っています。
面識はほとんどなかったものの、その強烈なキャラクターから牧先生の噂は至るところで聞いていて、一方的に気になる存在でした。「Facebookが異様なまでに熱く文章が長い」「先生の授業へのコミットが凄いし、学生にもそれを要求してくる」「牧先生の魅力にはまった人はとことんはまる」等々。また、私が履修できなかった1年秋クォーターの別の授業を受けた学生が牧先生を囲んでいるのを見て、なぜか全く関係がなかったにも関わらず少し焦りを感じたことを覚えています(笑)大変と豪語する授業にも関わらず、それでも受けて立つ優秀なメンバーのコミュニティに入りたかったこと、その中で努力することで自分自身も成長できそうだと感じたからかもしれません。
このような形から初回の授業に期待を抱きながら恐る恐る行ったのですが、結果として、迷わずその授業を履修することになりました。先生はじめコミュニティのメンバーの魅力に一気に引き込まれたと共に、挑戦的な言葉に「受けて立とうじゃないか」と戦闘モードになったからだと思います。ぜひ気になる方は恐れず、初回授業にお越しください。

【自身の授業選びの軸】
私はWBSの授業を数多く受ける中で、自分が好きな科目は、ぎりぎり背伸びして辿りつき、成長を実感できる授業だと感じています。そのため、苦手なファイナンス、会計、統計を中心に受講しています。あと数年したら今習った知識も使わなければ忘れていくと思います。でも、できなかったことをできるようにする過程でもがいた経験や、できるようになった自信は自分の身に刻み込まれていくと感じています。
英語の統計を使ったアカデミック論文を読むという牧先生の授業も、理系出身でなければ統計も素人の私には苦行の日々でしたが、難しい論文を読み込むという作業はスキル面のみならず気持ちの面でも確実に成長を感じられるものでした。想像以上の先生のコミット、アカデミック論文を平然と読みこなしてくる仲間がいるからこそ、「分かりませんでした」では済まされない焦りから自分も最大限頑張り続けた8週間でした。

【この授業のお薦めポイント】
私はこの授業を取って正解だったと心から思いますが、この授業は正しく理解した上で履修して頂いたほうが良い授業だと思っています。そのため、今後履修を検討される皆さんに向けて、なぜこの授業が良かったかについて5点記載したいと思います。かなり主観ですが、このような意見もあるのかと参考にしていただければ幸いです。

1)ベンチャー・スタートアップ・スターサイエンティスト等、アカデミック論文から最先端の知識を身に着けることができたこと
この授業は最新のテーマや論文を数多く扱います。去年出たような最新の論文まで30本もの幅広い論文を扱うことで、今このテーマに関してどのような議論が行われているかを認識することができます。特に自分は大企業との付き合いが多くこの領域の知識が少ないため、知識を身に着けるという観点で情報のシャワーを得られたことは良かったです。
2)体系的に論文の流れ、統計の要素を習うことができたこと
WBSは修士論文が卒業要件で必須ですが、統計解析をほぼ経験していない人間が定量論文を執筆することは並大抵のことではありません。統計論文を執筆する上で必要な内的妥当性、外的妥当性、統計的構成妥当性、概念妥当性等、またOLS、Logit、Poissonや交差項等論文の読み方まで、ただ漠然と読むのみならず要素をしっかりと抑えられたことです。
3)統計を用いた英語のアカデミック論文を端から端まで読み切る力、そしてそれを分かりやすく説明する力をつけられたこと
当授業は学生が論文を発表するセミナースタイルの形式をとります。発表時の予習目安は5時間と言われていましたが、5時間などで到底終わるわけはなく倍の10時間はかかりました。またはじめ読んだ時は分からなすぎて絶望するのですが、それでも諦めずに読んでいくとふと光がさす瞬間がありました。一人だと絶対に諦めるアカデミック論文の読み込みですが、発表しなければいけない、周りは読み込んでくるという強いプレッシャーの中にいたからこそ、読み切れたと思います。
4)学んだことをどう実務に応用できるかという視点を日々考えて業務に実践できたこと
授業では論文を読むたびに、この内容を実務にどう応用するかという点を質問されます。今回のテーマは、ベンチャー・スタートアップ等、私が日々仕事で相対する大企業とは異なりましたが、クラウドファンディング、インセンティブの設計、大学間連携、技術者のSpill Over等大企業でも活用できる話が多く、他の分野を学ぶことが自分自身の仕事の幅を広げる手助けになるということを認識しました。
5)優秀な人が集まるラーニングコミュニティに参加できたこと
この授業は、最初からいかに大変な授業かという多数の脅し文句が並びます。仕事をしながら、また他の授業を履修しながら当授業を履修することは苦行ですが、そのような前のめりに成長を追い求める仲間やそれにコミットする牧先生との出会いは非常に大きなものでした。また、この授業は卒業生も参加するため、牧先生のコミュニティに入ることができたことを嬉しく思いました。

【最後に】
今回8週間を通して30本のアカデミック論文の理解に努め、なんとか生還することができましたが、アカデミック論文という点だけに特化すれば、果たしてどれだけアカデミック論文を読めるスキルが実務に有用かは諸説あると思います。しかし、今まで得ていた情報源が日本語の本やネット記事から海外のアカデミック論文まで広がったことで一気にリーチできる幅が広がること、できなかったことができるようになる成長を確実に感じられたこと、切磋琢磨しあえる仲間に出会えたことは、この授業で得られた最大の結果だと思っています。刺激や成長をこよなく愛する方々には、大変お勧めする授業です。
そんな刺激を受け続けたいと思ったので、牧先生には修論の副査もお願いすることになりました。是非今後も末永くこのラーニングコミュニティに所属して自身を高めていければと思います。是非皆さんもこのコミュニティの門戸を叩いてみてください。


次回の更新は8月9日(金)に行います。