[ STE Relay Column 037]
越智 藍子「イノベーション研究のための定量分析を受講して-同じ目標を持つ仲間の大切さ-」

越智 藍子 / 早稲田大学経営管理研究科 修了生 ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 

[プロフィール]1985年生まれ。大学卒業後、ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社入社。マーケティング部に所属し現在までに肝炎領域における発売前から新薬立ち上げ(NS5A、NS3/4A、NS5B阻害剤)に従事。現在はマーケティング部にて血液がん領域を担当。
2017年4月から早稲田大学経営管理研究科(夜間主総合コース)へ入学、イノベーションのためのファイナンス戦略研究 樋原伸彦ゼミに所属。2019年3月修了。

1.初めに
私は、米国本社にもつ製薬企業であるブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社に勤務しています。祖父をがんで亡くした経験から、適切な薬剤情報提供の大切さやどのように必要な情報を届けるか、本当に必要な情報とは何かなどを日々考えつつマーケティング部に所属し活動しています。同社で働く世界中のマーケッターと共にプロジェクトを進めていく中で、彼らの知識量や課題解決力に圧倒され、私もビジネスを体系的に学び、視野を広げ、課題解決能力を身に付けたいという思いから早稲田大学ビジネススクール(以下WBS)への入学を決意しました。
WBSでは卒業までに専門職学位論文またはプロジェクト研究論文を執筆することになります。その執筆にあたって、WBS講義の中で一番、講義資料を見直したと言っても過言ではない「イノベーション研究のための定量分析基礎演習」について本コラムで記載させて頂きます。

2.イノベーション研究のための定量分析基礎演習
本授業は、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 吉岡(小林)徹先生が講師として2018年夏に新設された因果関係を定量データで検証するためにSTATAというソフトウェア利用して分析手法を身につける授業です。私にとって、STATAを本格的に使用することはこの授業が初めての経験となりました。当時は漠然と修士論文は定量分析を用いて仮説検証を行いたいと考えており、樋原先生からの勧めでがきっかけで履修した授業でした。幸いにも私は、統計解析については学生時代に学んだ背景と、日々の業務で使用していることから統計自体に苦手意識はほとんど無く、STATAを使いこなせる事で新しい武器をまた一つ身につけられるという感覚でワクワクしていました。
授業ではデータのクリーニング方法からコマンドの使い方、分析の手順まで細かくご指導いただきました。情報が溢れている中で定量分析を行うにあたって、定量情報の背景に隠れているバイアスや隠された真実を発見することの大切さを改めて教えて頂き、普段自分が認識している情報の見方について考えさせられるきっかけにもなりました。

3.同じ目標を持つ仲間の大切さ
夏休みも終わり、本格的に修士論文と向き合う必要に追い込まれてきた秋学期。とにかく時間を要したのは、設定した研究テーマや因果関係を検証する為のデータを収集、データ整理をすることでした。加えて、吉岡先生の授業で学んだはずのSTATAの使い方が頭の片隅に追いやられすぎており、講義資料を見一から直すことから始める事になりました。
先行研究の内容も踏まえてある程度私の中で構想はあったのですが、与えられた時間が限られている中で様々な焦りばかりが募っていました。そこで、吉岡先生に修士論文のご相談をしたところ快くアポイントを頂くことができ様々なアドバイスを頂きました。一人で考え込んでいるだけでは凝り固まってしまいですが、テーマに基づくとどの解析方法が望ましいか、解析方法は間違っていないか、不足している事はないか確認ができました。何よりも、今回の授業を履修したメンバー間でお互いにアドバイスをし合える環境が授業を通して完成していた事が何よりもありがたい事だと感じています。同授業を履修していた高山千尋さんが「STATAもくもく会」という文字通りSTATAを黙々と復習する勉強会を設定してくださり、松田大さん、一色さん、宗像さん、授業メンバーで何度も復習しました。何度も講義資料を読み直し、資料は付箋だらけとなっています。実践をサポートいただける授業のありがたさを感じるばかりでした。
論文作成のタイムラインは早め早めに自分の中で線引きしていましたが、結局は統計学的優位を見つける為に結局は12月の中もずっとSTATAを回していました。思うように解析結果は出ないもので、OLSからパネル分析までとことん実施し、最後までゼミ生、授業メンバーには助けられました。

4.さいごに
論文作成は、本当に多くの方々のご協力による成果物であり一人でできることは本当に限られていると思います。解析においても多くの方の目に触れることで精度が増し、すぐ相談できる仲間のありがたさを感じています。卒業後は、私が得た今までの経験を少しでも還元できるような活動に取り組みたいと考えています。

授業終了後にも継続してご指導頂いた吉岡先生、本授業の開講にご尽力頂いた牧先生に改めて感謝申し上げます。自分ごと化し実践するからこそ生じる疑問が多いので、この授業はぜひ来年度も継続して頂きたいと願います。

写真は授業の懇親会の様子(2019.02.22) このメンバーの多くが修士論文作成にあたって吉岡先生にご相談させて頂きました。ちなみにポーズはSTATAの‘S’を表現しています。


次回の更新は4月12日(金)に行います。