[ STE Relay Column : Narratives 093]
阿部 博「早稲田大学のオープンイノベーションへの取組みとあずさ監査法人のインキュベーション活動について」

阿部 博 / 早稲田大学オープン・イノベーション戦略研究機構 科学技術と新事業創造リサーチ・ファクトリー ファクトリーマネージャー / 有限責任 あずさ監査法人

[プロフィール]神奈川県出身。1990年慶應義塾大学経済学部経済学科を卒業。幼少のころからスポーツを続け、大学4年間は体育会で汗を流す。大学卒業後は公認会計士を目指し、朝日新和会計社入社(現 あずさ監査法人)。配属は会計監査に加え、株式公開支援する部署になる。依頼、上場企業の会計監査、新規株式公開業務、会社更生・民事再生、M&A等に従事する。2007年パートナー就任、2019年にインキュベーション部長となる。現在は大学発ベンチャーを中心に、社会価値が創造されると考えられる新しい革新的な技術やアイデアを有する企業及び起業家を発掘・育成・支援する活動を取り組んでいる。

[自分の思い]
監査法人で新規株式公開支援をしてきましたが、当時としては他にはない素晴らしい技術を持った企業をいくつか見てきました。しかしそのほとんどは資金が続かず途中で断念する結果となってしまいました。その時感じたのは日本の既存の企業がもっとベンチャー企業と交流してその技術を生かすことができれば日本からイノベーションも起こるのにという思いでした。当時の日本は若い学生も科学者もベンチャー企業に対する認知度も少なく大手企業ばかりに目が向いていました。更にベンチャー企業には資金も集まらず、米国と比べてもダイナミックにイノベーションが起こる気配すらない状況でした。その時から、自分は日本で新しい企業がどうすれば生まれて、成長してけるのかを考えるようになりました。

[あずさ監査法人のインキュベーション活動]
現在、あずさ監査法人で大学発ベンチャーを中心に新しい革新的な技術やアイデアを持つ企業及び起業家を発掘して育成・支援する「インキュベーション」活動をしています。日本のいろいろな大学に足を運び産学連携関係者の方々と議論し、各大学が持っている課題解決に自分たちが出来ることを提案・実行しています。現在の日本では若い優秀な人材が既存の優良企業等への道を選ばず企業に向かっているという現実があります。自分たちは監査法人が有する社会からの信頼を土台にして経営面や管理面から支援を中心に取り組んで行きたいと考えています。

[早稲田大学のオープンイノベーションの取組み]
丁度時期を同じくして早稲田大学のオープンイノベーションの取組みを知りました。それは産学連携、社会ニーズを理解した高度人材育成、論文・知財の創出、ベンチャーの育成を目指したもので、自分が以前感じた[自分の思い]への解決への道でした。そこで牧先生を中心とした「科学技術と新事業創造リサーチファクトリー」へ参加することで少しでも早稲田大学の取組みに貢献したいと思いました。

[科学技術と新事業創造リサーチファクトリーへの参加]
牧先生の主な取組みは「イノベーション手法の知見の共有」「シーズのビジネス化に関するパイロットプロジェクトの実施」「「大学のシーズ、有望研究者、エコシステム関連ベンチャー企業等のリスト化」は理論を具現化するための取組みで自分にとって斬新で新鮮な活動でした。自分たちは今までの経験をベースに如何にエコシステムを構築できるかということで進めてきましたが、牧先生の理論に基づく取り組みは素直に自分の中で納得がいくものでした。この活動を通じて早稲田大学のイノベーション活動に貢献し、日本社会そして世界のためにも新しい社会価値を生む技術やアイデアが出るような形になれるように努力したいと思います。
今後とも宜しくお願いします。

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次回の更新は5月29日(金)に行います。