[ STE Relay Column 009 ]
中島 好美 「期待していたビジネススキル以上に、新しい分野への興味と踏み出す力をもらった2年間!!」

中島 好美 / 本田技研工業株式会社

[プロフィール]大学卒業後、みずほコーポレート銀行入行。国際部門で5年間勤務した後、本田技研工株式会社へ転職。四輪事業を中心に担当(マーケティング企画、アジア大洋州地域事業等)。2つの会社で地域事業(アジア)サイドと本社サイドの業務を経験。写真はWBSのシンガポール開催講義「Digital Marketing」に参加した際のものです。

牧先生との出会い
Weseda Business School(WBS)2年生の秋「サンディエゴから新しい先生がいらっしゃるらしい」、「秋からMOT系の授業をもつらしい」とのことで、ざわざわしていた。2017年秋、牧先生がWBSに赴任される。同期の佐々木さんが懇親会を企画してくれたが、牧先生は懇親会の場で自家製ビールをふるまってくれるとてもフレンドリーな先生だった。ゼミでいったシリコンバレースタツア(詳細後述)をきっかけに、以前よりもイノベーションに興味を持つようになっており、様々な新興プレーヤーが既存産業を駆逐していくような大きな変化を感じていた。先端的なイノベーションの背景や新しい産業がうまれるメカニズムについて、一時的なスタツアの刺激・興奮で終わらせるのではなく、起こっている事象の背景にじっくりせまりたいと思い牧牧先生の「技術とオペレーション」を受講した。この授業ではケース(大量!)、豪華なゲストスピーカー、事前課題等を通して、①新しい事象やテクノロジーの可能性(シェアリング、ドローン、ゲノム)をロジカルに要素分解し、考え抜く面白さ、②自分とそんなに歳の変わらない人がイノベーティブな会社にチャレンジし、自らの目標を達成しようとしているという気付き(今ほど有名になる前からUBERやテラドローンに転職された方がゲストとして講義に参加して下さった)を得た。ゲストスピーカーでいらっしゃったシリコンバレーVCのGlobal Catalyst Partners, Managing Director & Co-Founder大澤弘治さんとお話出来たことで、授業の枠を飛び越えて大いに刺激を頂いた。 
 しかし難点がひとつ。「牧先生は受講生が社会人だということを忘れてしまったのではないか!?」と思ってしまうボリュームの課題と資料を配る。同期の佐々木さんが授業のTAをしていたが、台車で大量の課題や資料を運んでくるので毎回唖然としていた。2年生の秋冬は修士論文執筆という逃げられない戦いを控えていたが、意図せず牧先生の「技術とオペレーション」もなかなかの逃れられない戦いとなった。
「科学技術とアントレプレナーシップ」はWBS卒業後、聴講生というかたちで受講させて頂いた。マッキンゼー日本支社長をされた平野正雄先生のゼミでロジカルな思考というものは相当勉強してきていたが、定量論文を通して、科学的思考や因果関係にせまるプロセスをもうすこし経験してみたいと考えていた。メインの受講生はM2の皆様。とても優秀な牧ゼミのメンバー、アントレプレナーシップ系のゼミのメンバーをはじめ、IBMかブロックチェーンのお話しかしないスターのような平山さんともご一緒させて頂いた。定量論文を読むことは本当に難しく、ビジネススクール通学によって考える術がひろがったいるなかでも、一人でこなすことの出来ない難題であった。私が発表を担当したのは、”How Do Accelerators Impact High-Technology Ventures?” という論文で、アクセラレータがどのようにスタートアップのパフォーマンスに影響するかを解明するという先進的なテーマを扱った論文であった。牧先生に個別にお時間を頂き、定量論文のテーブルの読み方を習ったが、「Table1説明してください」「もう一度」「違います」ととても厳しいご指導に逃げ出したくなったことを今でも覚えている。本当に情けなかった。2か月という短期間ではあるが、定量論文の何をY(被説明変数)においていくのかという考え方に濃密に触れることが出来、いくつか論文案をつくることが出来たことはとても嬉しく、達成感があった。イノベーションやスターサイエンティスト、エコシステムに関連する論文を読み込み、「問い(Research Question)」をたてる訓練が出来る講義だと思う。もう申し上げる必要もないかもしれないが、1週間で6本の英語論文+大量資料という殺人的なボリュームによって腰痛になる人、毎回何かに引きずられているような気分になる受講生が登場する程、過酷な環境でもあった。
 このようななかでも履修者は修論作成のためのヒントを得ながら、興味・関心の高い分野に取り組んでいた。(当時)スタートアップで働く成田さんも自分のバックグラウンドや興味関心にあわせて積極的に“Signaling by early stage startups”や“The geography of crowdfunding”といった論文の発表に立候補していた。授業で扱った論文のサマリー表を作成して、自分のストックにしていたことも印象的であったし、いつも自分の頑張り・興味・喜び・大変な状況を常に発信していたのでコミュニティのモチベーションアップに繋がっていたと思う。デロイトトーマツベンチャーサポートへの転職前に他の授業・ゼミ・JBCCに加えてこのボリュームをこなしていたかと思うと驚くばかりだ。ちなみにこの講義を履修したからといって全員がテクノロジーやアントレ系のことをテーマにする訳ではない。牧ゼミの高山さんは、デザイン経営という注目度の高い分野でRQを設定し、様々な説明変数、被説明変数の関連性について仮説をたてて取り組もうとされていてとても興味深かった。高山さんはWBSものづくり部の数々のイベントを主催されている。コミュニティのGiverの役割も果たし、WBS藝術部でも数々のイベント情報をシェアしてくださっていて、そのパワー・行動力に圧倒される。
このようにWBSでは今まで経験のなかった領域も自分の興味次第でどんどんと知識、人的ネットワークを広げていくことが出来る。2つの講義を受講して、イノベーションやサイエンスビジネスにおけるケースディスカッションを通した実践的な知識、この分野で抑えておくべき理論、この分野の論文を網羅することが出来、自分のなかに1つの基礎基盤が出来たように感じる。もっともっと極めていかなければ自分の軸にはならないが、興味から一歩進みその分野のエントリーチケットのようなものを得たように感じている。メンタル的には、「人は自分の勉強したこと以上の総和以上にものごとを理解出来ない」を経験出来た(涙)

いざWBSへ
 ここでWBSへの志望動機やWBSでの学びに焦点をあてる。
 私は銀行から事業会社に転職をし、多くの事業課題をどのように整理すれば良いのかについて悩んでいた。いつまでもネットや書籍によるその場しのぎの知識で何とかしていくのは無理があり、しっかりとした知識と軸になるような専門性を必要としていた。20代の体力・スピードで何とかしてこれた業務も、今後は今までと異なるスキルが必要だと感じていた。「課題形成力」「問題解決力」、「体系的な経営全般の知識」といったスキルの習得を目的にWBSを志望した。WBSの夜間コースしか考えていなかったが、仕事をしながら通えるところ(仕事の実感を持ちながら勉強出来るところ)、実務家出身の先生が多いこと、学生の層も幅広いこと等が志望理由である。1月のお正月休みで決意し、なんとか冬募集に間に合った。

WBSで得たもの
 WBSは、コンサルティングファームをはじめ実務家出身の先生、さらにアカデミック領域の先生、双方が揃った贅沢な環境である。更に、有名企業の幹部、ミドル、若手、自分で経営をしている社長といった具合に幅広い学生が集まっている。表面的なトレンドだけではなく、自分の実務経験も交えて深い話を出来る方が多い。自分が実務経験してきた分野で講義を持ててしまう人が沢山いるのではないだろうか。自分とは異なるバックグランドから飛び出す授業中の発言は自分の視野の狭さを気づかせてくれる。更に物事の伝え方、プレゼンスタイルも各自異なるので毎回同級生から気づきを得ることも多くあった。
2年間の講義を通して、得たことは以下のように考えられる。
 ①いつの時代も普遍的なビジネスパーソンとしての軸(マインドや思考)
 リーダーシップ、Ethic、経営者・マネジメントとしての視座、ロジカルな思考、グローバルに俯瞰してものごとをとらえる力等、産業・トレンドに関係なくどんな時代にも必要になるような軸ではないだろうか。
 ②個別のビジネススキル、トレンドとなっている事象
 経営はあらゆる分野の総合格闘技だと実感しているので、①のようなビジネスパーソンとしての軸に、財務会計、マーケティング、ファイナンスといった各専門スキル・知識が重なりあうイメージだ。個々の科目が全て結び付いていることも体感できた。また、各領域を代表するような先生方から発信される情報のおかげで、今どのようなビジネスや人が話題になっているかを以前よりも容易につかめるようになった。
 ③コミットする力
 入学してはじめてのグループワークは、内田和成先生の「マーケティングと競争戦略」という講義で、「靴のCHIYODAへの提案を考える」という題材だった。2年生の先輩から「何なら出来る?、何が得意分野?」と聞かれ、わたしは固まってしまった。自分にこれといったスキルが無いということにすぐに気づき、打ちのめされたが、自分が何に貢献出来るかを常に考えながら、全てのタスクにコミットすることで周囲のメンバーに全力で応えようとしてきた。2年間仕事をしながらWBSに通い、あらゆる課題をこなし、修士論文を書き上げるというのは本当に大変だったが、コミットしてやり遂げることである種の自信がつくのではないだろうか。
 
 ゼミはマッキンゼー日本支社長をされた平野正雄先生のゼミに入る。現代の複雑な事象を紐解き、シンプルに本質をとらえていくロジカルな思考プロセスは本当に勉強になった。修士論文策定の過程でハンズオンのご指導を頂きながら、自動車業界におきているCASE(Connected・Autonomous・Sharing・EV)についても要素分解しながら、産業全体に何が起きているかを整理し、更には戦略オプションにどのように繋げていくかを追うことが出来たのは尊い経験であった。
 数々の授業、同級生からのインプットを通して視野・視点がどんどん広がっていった。なかでも2年生の夏にゼミでいったシリコンバレーでのスタディーツアーからはかなりの影響を受けた。CHANGE THE WORLDのためにイノベーションをうみだそうとする空気、人生をかけてチャレンジする人々、現地で奮闘される日本人の覚悟、人生へのオーナーシップ、成長への思いに圧倒される。自分このままでいいのか?と強い刺激を受けた。入学前には、個々のビジネススキルのブラッシュアップ、体系化した経営知識の習得を期待していたが、それ以上により経営や経営者・リーダー、社会への貢献というものを強く意識するようになり、オーナーシップをもって生きるとは?という点も考えるようになった。
WBSは通う年代に応じて、気づき・新しい目標が出来ると考えている。マネジメント層であれば、習ったことを自分の意思決定に反映することが出来、ミドル・若手は新しい視野・スキルを得てキャリアチェンジも含めて様々な選択肢が広がるだろう。実際、WBSでの学びをきっかけにキャリアアチェンジを果たした同級生達が何人もいる!! 日系大手企業からAmazonに転職した渕上さん(あだ名はセルフイケメン、略してセルイケ)、日系大手証券会社からFintechベンチャーに転職した矢野さんと、、、(数えきれない)マネジメンやミドル層の彼らもWBSでの学びを契機に、ミドルエイジクライシスに苦しむどころかどんどん飛躍している。
 海外MBAの方がネームバリューがある点は理解しているが、(基本的には)日本語でしっかり深いところまで考え抜くというプロセスは、私のキャリアにおいて絶対に必要であった。

超ラーニングコミュニティWBS
 WBSではゼミ、グループワークの課題、部活によって、一時的なものから、卒業後も続くレベルのコミュニティが生まれやすい環境にある。
前述のゼミでは、修士論文執筆という共通したタスクの傍ら、それぞれのゼミの特徴を活かしたプログラムで、お互いに切磋琢磨し学びあっている。講義のなかでもグループワークのスタイルで課題が出されることがあるが、卒業後も続くグループがうまれている。例えば、講義から2年たった今でも企業価値創造型経営のグループ(総合商社、広告代理店、(当時)商社、金融、通信、アセットマネージャー、(当時)外資外食、メーカーといった具合に業界のドンも含めた多様性のあるグループ)で集まり、ゆるい勉強会を続けているといった具合だ。更にWBSには部活という仕組みがある。一緒に食事をするだけのものから、勉強系、ゲストを呼ぶようなものまである。「皆さんもいくの~?」という感じで、ものづくり部(は入学のときから入っていましたが)、イスラエル部、起業部の勉強会・ゲストとの懇親会もハードルもなく参加出来てしまった。最大勢力の餃子部や乙女座の合同誕生会を楽しむ乙女部に加えて、こういった部活に参加するようになり、そこで出来た繋がりや興味をベースにまた新しい世界が広がっていったように感じる。WBSは、最先端のテーマを自主的に勉強し、自分の興味をどんどん広げていくカルチャーが根付いている。入学前、社会人大学院というものはもっと孤独に淡々と生活するものだと思っていたが、自分の人生において、仲間・尊敬する先生方との充実した時間という意味でも、将来への影響という意味でも、こんなに大きな存在になるとは思ってもみなかった。

今後
 2年間のWBS生活を修了し、今年は思うところがあって、経済産業省、シリコンバレーVCのWiLが主催する「始動プログラム(http://sido2018.com/)」と、新規事業の部署への異動にチャレンジしている。今年取り組んでいることはWBSに来ていなければ、きっと関わることがなかっただろうと思うことばかり。社会人になって、「自分の頑張りで自分に期待できる」ような心境になれたのは、初めてである。視野・視点・可能性・人の繋がりを一気にひろげてくれたWBSというコミュニティに感謝致します。

 


次回の更新は9月21日(金)に行います。小学館の出村 大進さんによる「驚きの連続!! 「技術・オペレーションのマネジメント」で学んだこと」です。