[STE Relay Column 001 ]
早稲田ビジネススクールでの”Bootstrapping” &「科学技術とアントレプレナーシップ」分野の”Mover and Shaker”を目指して

牧 兼充 / 早稻田ビジネススクール准教授

[プロフィール]
早稲田ビジネススクール准教授。主な兼職として、カリフォルニア大学サンディエゴ校Rady School of Management客員助教授。研究分野は、テクノロジー・マネジメント、イノベーション、アントレプレナーシップ、科学技術政策、大学の技術移転、大学発ベンチャー等。
政策研究大学院大学助教授、スタンフォード大学リサーチ・アソシエイト、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師等を経て現職。日米において、大学を基盤としたイノベーション・システムの構築に従事。カリフォルニア大学サンディエゴ校において博士(経営学)を取得。
その他の情報は、Kanetaka M. Maki, Ph.D. Official Site をご参照下さい。

WBSに異動してから立ち上げたもの
 おかげさまを持ちまして、2017年9月に早稲田ビジネススクール (WBS) に異動してから、もうすぐ1年が経とうとしております。多くの方のご協力いただいて、様々な活動の基盤ができつつあります。
2017年11月には、研究活動の基盤となる受け皿を確立するために、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センターの中に、「科学技術とアントレプレナーシップ部会 (STE)」を立ち上げました。ここを基盤に、様々な研究、教育、アウトリーチを展開して、エコシステムを構築していきたいと思っております。
2017年10月には、政策研究大学院大学の隅蔵さん・原さん、千葉大学の長根(斎藤)さんと一緒に活動してきた、「スター・サイエンティスト」に関する研究プロジェクトが、JST-RISTEX(「政策のための科学」)に採択されました。このプロジェクトを推進するためには、データセットの構築や分析を行うためのリサーチ・アシスタントを大量に雇うことが必須で、そのための研究資金の目処を立てることができました。このJST-RISTEX「スター・サイエンティストと日本のイノベーション」をSTEの活動の中核として位置づけ、大きな成果をだしていきたいと思っております。
WBSでは、「技術とオペレーションのマネジメント」という選択必修の授業と、「科学技術とアントレプレナーシップ」という選択授業を、それぞれ日本語と英語で担当しています。前者はケース主体で、技術を活用した先端の事例からテクノロジー・マネジメントの概要を網羅的に学ぶことを目的としています。後者は論文主体で、科学技術とビジネスに関する先端的な学術論文を読むことで、学生に先端的なアカデミックな知見を体系的に学んでもらうことを目的としています。これらの授業の立ち上げにあたっては、佐々木さん、田巻さん、平山さんらにTAとして大変にお世話になりました。
ゼミも立ち上がりました。全日制グローバルのゼミは、Huan、Isabel、Dilumi, Rameshの4人が加わり、「イノベーションとアントレプレナーシップ」について学んでいます。留学生が多いということで、inclusive businessに関する観点を広げるために、淺羽ゼミと合同で中津川で合宿を開催したりしました。夜間主総合のゼミは、大ちゃん、ちーくん、じょーじ、すんちゃん、うねちゃん、やすの6人が参加し、「科学技術とアントレプレナーシップ」に関するケース・ディスカッションやゲストスピーカーとのディスカッション、論文の輪読などを行っています。このメンバーが名実共にゼミの一期生です。在学中だけではなくて、卒業後も含めて、一緒にゼミを中心としたコミュニティの立ち上げるを進めていきたいと思っています。
ゼミを立ち上げるにあたって、卒業生がいないことがゼミ生にとってハンディになるのではないかと思い、ゼミのメンター制度を立ち上げました。大澤弘治さん、清泉貴志さん、櫻井直樹さん、真野浩さんにご協力いただいています。グローバルに科学技術とビジネスの分野でご活躍の方々にゼミのメンターになっていただいて、ゼミ生との交流を通じて、ゼミ生のキャリア形成のサポートをお願いしています。
MicroMBAはもう一つ、私がWBSに関わるようになって新しくたちあげたものです。UC San Diegoには、MicroMBAと呼ばれる理系の博士課程学生やポスドクを対象としたビジネスのエッセンスを学ぶプログラムがあります。こういったプログラムは日本においても、とても重要で、どうやって日本に持ってくるかを考えていました。今回、たまたまEDGE Nextに関わらせていただく機会を樋原さんが作って下さって、理工学術院の朝日さんの多大なご尽力で実現することができました。WBSとUC San DiegoのビジネススクールであるRady School of Managementは色々な形で連携をしていますが、その連携の中核として、このMicroMBAを発展させて行きたいと思っております。

集積としてのWBS
WBSは色々な意味で研究者の集積だと思います。根来さんや淺羽さんには異動してから、WBSでの活動の進め方について、様々なご助言をいただいています。技術経営分野では長内さんとはゼミを合同で開催したり、研究会をご一緒したりと、様々な連携が増えています。マーケティング分野の川上さんとは部屋が隣ということもあり、今後色々なコラボレーションが増えそうです(色々な意味での”Peer Effect”があります)。着任前からずっとお世話になっている入山さんは自分にとってのロールモデルのお一人で、入山さんの身近にいることで、僕が米国で学んでいない本流の経営学の研究のことをたくさん学ばせていただく機会が増えています。アントレプレナーシップ分野では、長谷川さんや東出さんとは、論文指導をご一緒させていただいたり、新プログラムの立ち上げのご相談をたくさんさせていただいております。池上さんにはMicroMBAを含めて、色々なご相談をさせていただいており、これからもどんどんコラボレーションが広がりそうです。樋原さんとは着任前からでもありますが、更に色々な国際連携のコラボレーションが広がりつつあります。内田さんには、エグゼクティブ教育で声かけをいただいて、今後たくさんのことを学ばせていただければと思っております。その他、ここではお名前を挙げられ切れていませんが、本当に多くの皆様にお世話になり、新しいプロジェクトの立ち上げをご一緒させていただいております。

これから目指すこと
 アントレプレナーシップの分野では”bootstrapping”という言葉があります。これは、「何もリソースのない段階から自分の力で、新しい組織・ビジネスを立ち上げる」というような意味です。パソコンをbootするというのも、パソコンは自力で立ち上がるという意味で、同じ語源を持っています。おかげさまをもちまして、WBSに移籍して1年を経て、この”bootstrapping”はフェーズとして完了しつつあるかなと思っております。これだけ多くの活動をやることができて、”bootstrapping”が無事に終了できたのは、いつも献身的に支えてくれる、とっても優秀な秘書の長尾寿子さんのおかげです。
ビジネススクールにおける「科学技術とアントレプレナーシップ」という分野は、本流ではないものの、ビジネススクールにとってとても大切な研究領域であると思っています。文理融合の観点からは、中核中の中核の一つですし、ビジネススクールが社会に貢献できるとても大切なファンクションの一つであると思っております。これからWBSを中心に「科学技術とアントレプレナーシップ」分野のエコシステムを構築して、日本やアジアにおけるこの分野の”Mover and Shaker”(人を動かし揺さぶる人・組織)としての役割を果たしていくことができたら、と思っております。皆様のご指導、ご支援のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

 


次回の更新は7月27日(金)に行います。政策研究大学院大学教授の隅藏康一さんによる「スター・サイエンティスト研究プロジェクトの経緯」です。