[ STE Relay Column : Narratives 203]
東 治臣「ナラティブ・トークがもたらす牧ゼミ第6期生の絆」

東 治臣 / 早稲田大学大学院 経営管理研究科

[プロフィール]2020年よりAmazon Web Services JapanのProfessional Services部門で最も歴の長いDX Advisory / Innovation Advisoryコンサルタントとして、様々な業界のエンタープライズ企業のお客様のビジネス変革を行うコンサルティング業務に従事。前職の本田技術研究所(2017〜2020)では、AI・ロボティクス領域においてHonda RaaS Platform(RaaS: Robotics as a Services)の企画・戦略立案を行うとともに開発責任者を担当。4つのスクラムチームのプロダクトオーナーも兼任。Hondaとして初めてソフトウェアプラットフォームコンセプトを社外発表(CES 2019)。ロボティクス領域のOSSコミュニティにも貢献(ROSCon JP 2019)。リコー(2011-2017)では、新規事業開発室の立ち上げにマネージャとして参画。社内起業組織のCEOを担当して、リーンスタートアップやデザイン思考を実践して、顧客起点の発想でゼロからの製品化を実現。リコー中央研究所では、新規R&Dとして工作機械の故障予兆システムR&Dプロジェクトの実証実験とソフトウェアチームをリード、後に製品化。富士フイルムグループ(2004〜2011)では、ソフトウェアエンジニアとしてC/C++を用いたオブジェクト指向設計による画像処理系R&Dや大規模組込コントローラプラットフォームのアジャイル開発プロジェクトなどを経験。富士フイルムグループ共通画像処理ライブラリのJPEGエンコーダ/デコーダ(Ver. 2.0)の設計実装を担当。国内外で40件以上の特許出願。上級バーチャルリアリティ技術者(日本バーチャルリアリティ学会)、画像処理エンジニア検定エキスパート(CG-ARTS)、CGエンジニア検定エキスパート(CG-ARTS)、Certified Scrum Product Owner。2022年より早稲田大学ビジネススクールに在学中。牧ゼミ6期生。

 

■牧ゼミという選択
 本コラムの目的は、私が既に出会った人、そして、これから出会う人に向けて、牧ゼミに関連する話題を中心に、少しでも私がどのような人間なのかを知るヒントを得て頂ければと思い執筆しております。私の牧さんとの出会いはこちらを参照して下さい。私が2022年に早稲田大学ビジネススクールに入学した理由は、①現業で経営層や上級管理職層とビジネス変革の議論やプロジェクトの伴走を行う中で、よりアカデミックな観点からも思考やフレームを整理して、第三者への納得感や説得力を向上させるスキルを身に付けたいと思ったこと、②直近で取り組んでいたAI・ロボティクス領域に加えて、Web3.0/XR/メタバースなどの新たなレベルでのインターネット環境などのテクノロジーが進化する中で、世の中に役立てるテクノロジーを起点とした新規ビジネスの可能性を探ること、③テクノロジー、デザイン、ビジネス、+αの観点を融合できるキャリアを目標に更なる人間的な成長を実現すること、の3つの観点から成っています。
 学内には多様で魅力的なゼミがたくさんある中で、最終的に牧ゼミを選んだ理由は、牧さんの専門領域であるテクノロジー・マネジメント、イノベーション&アントレプレナーシップ、科学技術政策などへの興味に加えて、牧さんの人的ネットワークを構築する人間力に魅力を感じたこと、そして、牧さんが担当されている「Lab to Market: 科学技術の商業化と科学的思考法(以下L2M)」の授業の中で「僕(牧さん)が最も思い入れを持って担当しているL2Mです」と発言されていることに共感したからです。L2Mでの正解のないイノベーション(仮説検証による失敗を前提とした成功の探索アプローチ)の体験は、今までのR&Dをベースとしたキャリアと重なり、ビジネススクールの中にこのような授業があることに驚きを覚えたとともに「将来のビジネススクールとしても、このようなアプローチは必須になってくるに違いない」と確信したことを記憶しています。

■ゼミメンバーとの出会い
 2023年度に向けたゼミ選考が終わり、2023年3月からプレゼミがスタートしました。ところで、ゼミ選びで重要なポイントの一つに「誰と学ぶか」があると思います。誰が牧ゼミを希望しているかは、事前の牧ゼミ体験ワークショップ(2023年1月14日)である程度知ることはできたものの、最終的に蓋を開けた結果がどうなるかは配属後にしかわかりません。第6期生となる牧ゼミのメンバーは、石村尚也さん(いしむー)(夜間主総合)、加藤寛崇さん(ひろちゃん)(夜間主総合)、田中甫さん(はじめちゃん)(夜間主総合)、舩場智代さん(ふなちゃん)(夜間主総合)、高崎朋子さん(ちゃんとも)(全日グローバル)、Pritchard Brendon Rossさん(どんちゃん)(全日グローバル)と私を含めた7名でした。7名のメンバーの中には、2022年度の履修選択の中でご一緒させて頂いた方もいましたが、初めて会うメンバーもいてとても新鮮でした。初回の顔合わせということで3月24日に「アルカナ東京」で、緊張しながらぎこちなくゼミメンバーと挨拶をしたことを覚えています。最初の対面は少し早めに到着した際に、お店の入り口付近にいるどんちゃんを見て、なんと声を掛けてよいか(「Hi」と言うべきか、「こんばんは」と言うべきか」)悩んでいたところ、どんちゃんから日本語で話しかけられて驚いたようなホッとしたような気になりました。ゼミメンバーは一人ひとりが素晴らしいバックグラウンドと意志を持っていて、一方で「ゼミの中で自分がどのような貢献ができるだろうか」ということを「鶴岡の幻の酒」を頂く前まで必死に自問自答していました(幻の酒を頂いた後はあまり覚えていません)。そして、当日は2種類のお酒の利き酒クイズを行ったのですが、改めて私は利き酒ができないことを確信しました。和やかな雰囲気で初回の顔合わせが終わりましたが、まだ、心の距離は十分に近くなったとはいえませんでした。
 ゼミメンバーとの距離が一気に近くなった出来事は4月1日〜2日で行ったゼミ合宿(NANJA MONJA)でした。開放的な九十九里の自然の中で集まってBBQやコテージで夜遅くまでそれぞれの事を語り合いました。このゼミ合宿では事前課題の一つとして各自の「ナラティブ・トーク(自分自身の物語)」を準備する必要がありました。この「ナラティブ・トーク」では、例えば、Steve Jobsの2005年のスタンフォード大学での演説のように、Jeff Bezosの2010年のプリンストン大学での講演のように、自分自信の弱さや語りづらい出来事を中心に物語を語る必要がありました。合宿の1ヶ月以上前に出された課題がゼミ生全員を1ヶ月間以上もの間、深い自己内省に誘ったことは疑う余地はありません。

■ナラティブ・トーク – 私の物語
 ナラティブ・トークを行って確信したことは、これはお互いが共有しないと意味がないということです。お互いの「ナラティブ・トーク」を共有し合うことを通して、相手の弱さを知り自分の弱さを見つめ直すことができて、自分の弱さを伝えることで相手にも同じ機会を提供することができます。それが絆になります。貴重な出会いと興味をもって本記事を読んで頂いている皆様に、私のナラティブをお伝えすることで、私と実際に出会った時に少しでも皆様のナラティブ・トークを聴かせて絆を深めることができればと思います。
 
 私の物語、生命の絆の話させて下さい。

 2021年9月30日、おばあちゃん(母方の祖母)がお浄土へと旅立ちました。大正、昭和、平成、令和と4つの時代を生きた96歳の大往生でした。同年10月2日に実家の宮崎で行われたお葬式に私は直接参列することができませんでした。コロナ禍の影響もあり親戚から「東京から帰ってこないように」という意志を伝えられました。しかし、母と葬儀社の素晴らしい手配により、iPad + Zoom環境を用意して頂き、私は東京から葬儀にリモートで参列することができました。葬儀場内には私の知らない若かりし日のおばあちゃんの写真がたくさん飾られており、おばあちゃんの人生の歴史を振り返ることができました。最後のお別れのおばあちゃんの表情はとても穏やかで、リモート環境の中ですが時間や空間を超えて、ちゃんとお別れをすることができました。
 おばあちゃんの家は私の実家の宮崎市から車で1時間ほどの高原町にあります。私は18歳までは宮崎に住んでいて、おばあちゃんの家には平均して数ヶ月に1回は行っていたと思います。おばあちゃんとかき氷の白熊を鹿児島まで食べに行くのがとても楽しみでした(そして、私は今でもかき氷が大好きです)。また、硫黄谷温泉で有名な霧島ホテルや高千穂牧場など、おばあちゃんと一緒にたくさんの思い出をつくりました(おばあちゃんに肩たたき券を100円で買ってもらって、ホテルのゲームコーナーに行くことも好きでした)。私が18歳に上京してから何年も経って、おばあちゃんの身体が悪くなって、お見舞いで特養老人ホームに曾孫を連れて行った際は、涙を流して喜び、涙を流して別れを惜しんでくれました。痴呆症もあり、微かに覚えている記憶の中に、孫(私)や曾孫の顔を覚えていて、思い出しては涙を流してくれたのではないかと思います。私が子どもの頃におばあちゃんの家から帰りたくなくて泣きじゃくっていた時に私の面倒をみてくれていたおばあちゃんが、その時に子どものように駄々をこねて別れを惜しんで涙を流している姿を見た時に、不思議な生命の絆の循環を感じたと共に今でもその状況が私の記憶体験として深く脳裏に焼き付いています。そして、その体験こそが私が死ぬ時までには後世に残したい「何か」を感じさせるものでした。

■私が牧ゼミで達成したいこと
 前述した早稲田大学ビジネススクールに入学した理由に加えて、牧ゼミでの私の大きなゴールは下記の3つです。

① 生涯の友人やコミュニティを見つけること(そして貢献し続けること)
② 人類の新しい記録体験の一端を検証すること(修論などを通して)
③ 次の新しいチャレンジを見つけること

 上記①〜③は関連性があるところもありますが、①に関しては「ナラティブ・トーク」やゼミ活動などを通して6期生メンバーと素晴らしい関係を築きつつあると思います。また、牧ゼミの中でコーディネータを担当させて頂いており、牧ゼミ卒業生や牧さんのネットワークを通して、多くのきっかけを頂いていると思います。ゼミや授業での貢献として、例えば、L2Mのメンターやコーディネータを担当させて頂いておりますが、卒業後もまた会いたいと思ってもらえる人になれるように、まだまだ精進が必要だと思っています。また、私が何か貢献できることがあればお気軽にお声がけ下さい。一人でも二人でも、私が何か貢献することで人生の大きな決断に寄与できたり、心身ともに辛いことを乗り越えたり、お互いの喜びを共有したことで、生涯の絆を創ることができれば、少なくとも私にとっては本当に幸せなことであることは間違いありません。
 ②に関しては、本記事内では語りきれていない生命の絆に向き合う私の物語として、ライフゴールの一つかもしれませんが、より大きなビジョンとしては「人類の記録体験のリデザイン」を構想してチャレンジしたいと考えております。もちろん2023年度の修論だけでは完結しない中長期的な取り組みになると思いますが、その一歩を踏み出せればと考えています。
 ③に関しては、自分自身がどのように生きていきたいか、どのように人の役に立つ人間になるか、を内省する機会をゼミの中でも頂いており、それらを通して少なくとも卒業後の次のチャレンジを明確にしていきたいと考えています。これまで複数の企業で新規R&Dや新規事業創出の仕事に従事していることでもあり、平均3年くらいで常に新しい環境に身をおいて、新しいことにチャレンジしています。私は内的には安住してしまう弱い人間なので、周りの外的な環境から大きく変えないと自分自身が変化して成長することができないと認識しています。また、変化の激しい時代において「テクノロジー×ビジネス×デザイン×α」の方程式で自己成長したいと考えており、少しでも未来を担う子どもたちにその姿や記録体験を残すことができればとも考えております。

 牧ゼミが開始して約3ヶ月が経過しましたが、牧さんを知り、ゼミ生を知り、自分自身を知る素晴らしい機会と環境に身を置くことができていると思います。牧ゼミや早稲田大学ビジネススクールでの学びは、私の人生の分岐点においても大きな影響を与えていると確信しています。そして、これから出会う皆様ともお互いに良い影響を与え合うことができればと思っています。本記事が少しでも未来の絆を創るきっかけになればと心から願っています。どうぞ宜しくお願いいたします。最後までお読み頂きありがとうございました。


次回の更新は7月7日(金)に行います。