[ STE Relay Column : Narratives 068]
會沢 洋一「大学の北米拠点として期待される役割―アカデミアを支えるー」

會沢 洋一 /  WASEDA USA, San Francisco Office, Executive Director 

[プロフィール] 2005年早稲田大学大学院理工学研究科 博士(理学)取得。その後同大学教育学部理学科生物学専修の助手として大学の教育や研究に関わる。2008年から早稲田大学の専任職員として、研究推進部で産学官研究連携や技術移転、国際部で北米・オセアニア地域を担当。2017年6月にWASEDA USAに配属され、北米における早稲田大学の教育・研究サポート、ネットワーキング活動に従事。  
Facebook: facebook.com /wasedausa

最初に自己紹介:
2017年6月から早稲田大学サンフランシスコオフィス(現地法人名:WASEDA USA, San Francisco Office、以下WUSA)の所長をしております會沢洋一(あいざわ よういち)です。早稲田大学の加藤尚志教授の研究室で脊椎動物の造血因子(血液を作るホルモン)について研究し、ポスドクと助手を経験したのちに、2008年に早稲田大学の職員となりました。最初は大学の研究を支える技術者となりたいと考えておりましたが、様々なご縁があり、研究推進部や国際部にて研究支援の業務を経験する機会に恵まれ、現在に至ります。
WUSAは、2008年に早稲田大学の北米拠点として設立されたNPO法人です。カリフォルニアのバークレーを拠点として、私と現地従業員(Anthony Johnson)の2名で主に以下のような活動を行っています。この場を借りて活動の目的や思いを共有させていただければと思います。

WUSAの活動:
1.現地の同窓生や早稲田大学関係者とのネットワーキング
2.早稲田大学入学希望者へのリクルート活動
3.協定大学機関等との国際的な教育・研究交流の支援業務(学生交流プログラムの支援、共同研究や研究者交流の支援、協定校との関係維持など)

1.ネットワーキング:
北米には12の地域稲門会(早稲田大学の同窓会組織)があり、その会員数は合わせると1,000名近くおり、稲門会にまだ所属していない卒業生も多くいます。この他に同窓生の家族や本学に留学経験のある元留学生を加えるとその数は数倍に膨れ上がります。本学のことをよく知っているこれらの方々との繋がりを維持し、早稲田ファン(フレンズ)となっていただくことは非常に重要なことであり、本学を応援してくれる大きなパワーが得られると考えています。しかしながら、実際には地域稲門会に入っていなかったり、本学留学後の連絡先がわからなかったりするケースが多く、またそれぞれのコミュニティー同士の連絡が少なく、ネットワークの構築やその仕組みがうまく作れていないことが今の課題となっています。2名のスタッフで北米のエリアを物理的にカバーすることは実質的に不可能であるため、より効率的・実質的な早稲田ファン獲得に繋がる手法を日々模索し続けています。

2.学生リクルート:
早稲田大学は、2004年にカリキュラムが全て英語で行われる国際教養学部を設置し、現在では7つの学部に英語学位プログラムを設け、海外からの留学生の受け入れを促進してキャンパスの国際化を進めています。北米エリアからの留学生獲得のために、WUSAではサンフランシスコベイエリアの現地高校(特に日本語クラス)を中心に訪問し、高校生に対して直接本学の紹介を行うリクルート活動をしています。
近年、米国大学の学費の高騰が続いているのをニュース等でご存知の方も多いと思います。日本の大学では国立大学で年間約60万円、私立大学では約120から150万円ですが、米国ではカリフォルニアの大学を例に挙げると例えば公立のUCBで年間420万円(州外の学生)、私立のStanford Universityでは500万円以上とびっくりするほど高額です。もちろんその分奨学金制度も充実していますが、奨学金が十分に得られない場合には学費を負担するために教育ローンを組まなければならないほどであり、学費を大学に通うことで得ることのできる知識や技術のための投資と捉えている家庭も多いとも聞いています。このような背景もあり、特に日系や日本のことを知る家庭の中では、日本の大学への留学に目を向ける事例が近年増えてきています。日本の大学にとって留学生の獲得は、多様な背景や文化を持つ学生が混じり合うことでキャンパスに変化をもたらし、大学が進化するための必須の要素となっています。
最近は大学ランキング等の一部の会社が決めた基準により、対外的に評価されることが多く、それが学生の進路の判断に大きな影響を与えています。知識、技術、価値観、友人など大学で獲得できることはそれだけでは測れません。すべての学生に正しい選択というものはありませんが、可能な限りクリアな情報を学生やその家族に届けられればと考えています。

3.教育・研究交流支援:
国際共同研究を推進する取り組みの一つとして、現在、UC San Diegoと早稲田大学の包括的な研究アライアンスについて準備しています。すでに双方の大学の研究者同士レベルで研究連携があり、このアライアンスの下で行われる共同研究に参加する研究者に対し、大学からの様々なサポートを検討しているところです。技術移転の仕事に携わっていたときにも感じたことですが、研究者同士をお見合いのようにマッチングさせて共同研究を組み上げていくのは決して容易ではありません。セレンディピティのようなことを期待する一方で、既に学会や研究会などで出会って共同研究を始めているまたは始めようとしている研究者を見つけて、共同研究が進みやすいようにアライアンスを整え、ワークショップのサポートや研究の広報などを通じて効果的な支援をすることも私たちの役割と考えています。先日、本アライアンスの打ち合せも含め、牧先生と共にUC San Diegoに訪問する機会がありました。UC San Diegoでは、Jacob School のInstitute for the Global EntrepreneurやOffice of Research Affairを訪問し、UC San Diegoを中心とした企業や研究所を巻き込んだダイナミックな連携や、そのエコシステムを動かす仕組み(人と人をつなぐ)について勉強させていただきました。また、出張直後には、Sozo Venturesを訪問し、Phil Wickham氏、中村公一郎氏、松田弘貴氏(3名とも早稲田ビジネススクールで牧先生と冬季集中講義を担当)と懇談しました。ベンチャーキャピタルの視点からベンチャーが企業から成長するまでの確度の高い計画と戦略の重要性について説得力のあるレクチャーをいただき、出口を予測した共同研究のサポートの必要性を思い知りました。ビジネススクールの学生だけでなくこれから社会に出ていく理工系の学生にも是非聞かせたい内容です。

15年位前になりますが、博士課程学生のときにはじめて米国での学会(American Society of Hematology)に参加するためSan Diegoを訪れました。指導教員の加藤尚志教授とともに当時のUC San Diego医学部長のDr. Kenneth Kaushansky教授の家に招かれたことが良い思い出です。当時は右も左もわからずSan Diegoの様子を味わうことはできませんでしたが、改めて訪問すると、陽気で落ち込む隙を与えないような天気は、アカデミックやベンチャーの雰囲気ととてもマッチしているように感じられます。

最後に:
学生のときから合わせると20年近く大学のそばにいます。大学のそばで立場や角度を変えながら内外の世界やその変化を見ていますが、その度に新たな発見や困難があり、試行錯誤を繰り返し、楽しみをみつけながら仕事をしています。微力ながらもアカデミアを支える一人として、貢献できればと考えています。

 


次回の更新は11月22日(金)に行います。