[ STE Relay Column : Narratives 048]
藤尾 夏樹「私のpeer effect放浪記~そして今WBS牧ゼミ~」

藤尾 夏樹 / 早稲田大学経営管理研究科在学中

[プロフィール] 医師、医学博士、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本リウマチ学会専門医、日本アレルギー学会専門医。高度急性期ならびに膠原病専門医療がキャリア軸でありながら、全身臓器を対象とする専門特性、ならびに超急性期病院2つを軸に20診療科以上、20医療機関での幅広い診療経験。医療圏としても都心、郊外に加え超高齢過疎地域での長い診療経験。大学にて研究も行い博士号も取得している。現在早稲田大学ビジネススクール夜間主総合コース在学2年目。科学技術とアントレプレナーシップの牧ゼミ二期(夜間)所属でひそかにゼミ長補佐(ポストとしては初代?)。ライフプロジェクト理事。WBSヘルスケア部幹事。

このコラムでは、私のpeer effect放浪記と題して、これまで私自身がピアエフェクトを求めて変遷してきた経緯を振り返り、最終的には現在所属している牧ゼミというコミュニティを中心に、早稲田大学ビジネススクール(WBS)から派生した様々なコミュニティや出会いをご紹介させて頂く。私が現在牧ゼミに所属していることは、私の「(正の)ピアエフェクトの求め癖」からくる必然性と理解することができる。牧さんの『科学技術とアントレプレナーシップ』の講義を受けたことがある者はわかるであろうが、ピアエフェクトとは『周囲の人々からその人へ及ぼす影響』のことあり、私がこのコラムで用いる意味としては『意識や能力の高い集団の中に身を置くことで、切磋琢磨しお互いを高め合う効果(Wikipediaより引用)』という意図である。私の経歴を手繰れば、全てピアエフェクトを求めて変遷してきたにすぎないと振り返る。

~過去のピアエフェクト探索~
 まずピアエフェクトに圧倒的にこだわったのが初期研修病院であった。医学生にもマッチングという就職活動があり、全ての医学生がいずれかの臨床研修病院に対して志望を出し、一方臨床研修病院サイドは独自の選抜試験を課して採用順位に沿って採用を決めていく制度である。医学生であった私の臨床研修病院の選択基準は切磋琢磨出来る同期であり、最高のプロフェッショナルを目指すために24時間臨床能力の向上を目指し前向きにワイワイ出来る仲間である。医師の生涯臨床能力は最初のキャリアで決まると常々多方面から聞いていたため、私は大学4年生後半あたりからの約2年間、大学の休みは業界内では名だたる有名臨床研修病院の研修や見学にあて、多くを見て回った。結果的に第一志望とした病院にご縁を頂いたが、その病院は世界各国の各分野で活躍する優れた臨床医を招聘し、高い臨床力を有する彼らを求めて日本中の医学生が初期研修に応募する臨床研修施設であった。日本有数の高倍率をくぐった初期研修時代の同期達は高い志とやる気に満ちており、現在でもかけがえのない仲間である。実際に彼らとのピアエフェクトと素晴らしい環境に恵まれことにより、医師としての臨床能力で高い優位性を授けてもらえたと現在でも感謝している。
 次にピアエフェクトを求めた機会は、WBSの前の大学院進学先選びであった。臨床研修期間を通じて、日常診療での「根拠に基づく医療(evidence-based medicine, EBM)」の日々更新と実践に自信を持てるようになってきたものの、evidence自体の構築作業を自ら行う事で更にevidenceの咀嚼力を向上させ患者への臨床還元力が高まると考えた。そのために初期研修と同じ病院での後期研修修了後は、大学医局への入局と大学院で研究を行うことを決意した。そう決めたあとは7つもの大学の医局・研究室と教授を訪問し、結果的に多くの候補を頂いたが最終的には指導教授の指導熱意に惹かれた大学での社会人大学院を選んだ。医学研究においてはスケールメリットが付き物で、一般論では大きな研究室の方が大きな予算と大きな研究に関われる可能性がある。一方で大医局では教授自身は仮に「一流」の実績があっても、研究指導に関しては途中介在する指導員が多く、基本的には「一流」から直接指導や協業する機会はほぼない。私が選んだのは、規模を犠牲にしても「一流」から直接指導を受けられる環境である。なるべく質の高い人から直接ピアエフェクトを求められる環境を選んだ。あわせて私は実務能力(臨床)のための研究、という視点であったため研究だけでなく臨床も同時に行うという条件も敷いていたため、それにもマッチした条件を提示してもらえた。外来、病棟、当直の合間に実験をこなしながら、その都度業界のトップから膝詰めで指導を受け続ける日々はまさに濃厚で過酷とも言えるものであったが、この選択により業界トップからの暗黙知は数多く頂け、かけがえのないピアエフェクトとなったと振り返る。

~現在のピアエフェクト探索~
 そんなピアエフェクトを求めて移動してきた私が、現在所属しているのがWBSであり、牧ゼミである。この文脈で考えると私が今牧ゼミに所属する必然性を感じる。
 私のWBS受験の際提出したエッセイには「気概と志しに満ちあふれた教授陣、同僚と共に過ごせられるのであれば、その他のほとんどの事柄は妥協できる」と記載している。やはりピアエフェクト志向である。WBSでの日々はまさに求めていた通り、素晴らしい経験と能力をもった同僚・教員たちに巡り合いの日々であり、そのことに大変幸福を感じている。私の所属するWBS夜間主総合コースでは一年目の後半に所属先ゼミを決めるゼミ選考がある。自分のバックグランド、将来やりたいこと、学びたいこと、そのコミュニティなど様々な要因で学生各々が志望を出す。ここで私は牧ゼミを志望した。そこにはやはりピアエフェクトの存在を確信させる魅力を感じていた。
 私はすっかりWBSというコミュニティを気に入っているが、牧ゼミはその中の最高の環境の一つであろう、と思っている。まず第一にやはり牧兼充さん(牧ゼミでは、指導教員の敬称をやましいことをお願いする時だけ牧先生と呼ぶことになっている)という指導教員の質と熱量と人間性である。ゼミの評価とは、色んな角度から様々な評価ができると思うが、あえてビジネススクールのゼミにおける学生の成長を被説明変数としてゼミ教員の要素の説明変数で回帰式を組むとしたら、学生の成長(y)=α(学生の能力)+β₁×(教員の教育への情熱)+β₂×(教員の教育スキル)+β₃×(教員の学生に割いた時間)+β₄(より良い教育への挑戦力)+β₅×(個別ニーズの汲み取り意欲)+β₆×(教員と学生が一緒に飲んだアルコール総量)+μといったところで如何だろうか。そうすると、牧さんの凄さがくっきりしてくる。まず牧さんは、教育現場において、学生の成長・実務への還元性に本当にこだわろうとしてくれている。当たり前のようで実は教員として中々難しいことと思っている。私は大学病院にいたころは臨床(実務)、教育、研究の3つの同時並行での業務を求められたが、正直一番手の抜きどころは教育の質を下げることであり、ほとんどの者がそうやってその他の時間を捻出していた。説明変数には色々あると思うが上記に挙げた変数はいずれも牧さん非常に高いエフォートをもって接してくれている。WBSの指導教授陣は優秀で魅力的な方が多いが、この方向性において牧さんは圧倒的な存在感であろうし、そのことは牧さんを知っている人はほぼ賛同してくれるだろう。そして牧さんは実は(!?)相当な配慮の人である。諸々鑑みても学生にとっての最大の幸福の一つを享受しているゼミなのだと思っている。次に牧ゼミのメンバーについてである。同期の阿部淳一さん、大角知也さん、大塚怜奈さん、徳橋和将さんらは、皆それぞれを本当にリスペクトできる素晴らしいメンバーである。彼らの人格、実務家スキル(言語力、営業力、コネクション力、ファイナンス力、前向き力、分析力や切れ味、学術能力・知見、まとめる力、ITスキル、肉マイスター度などなどなど)を心の底から尊敬しており、私の日々のピアエフェクト欲求を存分に満たしてくれる存在である。是非一生のお付き合いさせてもらえればと思っている。ゼミ一期生先輩である畝村千里さん、草地慎太郎さん、高山千尋さん、林田丞児さん、松田大さんらも卒後もゼミ活動、授業、WBS関連イベントなどでラーニングコミュニティにパワフルに貢献をして頂いている本当に頼もしい存在である。全日プログラムからはこれまでも秋入学での牧ゼミはあったが、この春から三人の新しい仲間(岡村仁弘さん、佐々木威憲さん、QI Linさん)が加わった。皆優秀さと情熱を持った素晴らしいメンバーで共に過ごす時間が楽しみである。その他素晴らしいクオリティの一流ゲストがゼミには次々いらっしゃり、形成されていくコミュニティの質の高さと量は牧ゼミの醍醐味の一つである。今まさにゼミによって巡り合えたピアエフェクトに囲まれた状態に感謝している。

 最後にWBSというコミュニティによって生まれた私のコミュニティを紹介したい。Make your life better by MBA×HEALTHCAREをミッションに立ち上げたLife Projectの創立メンバーでWBS同期の大角知也さん、北川美和さん、田中達也さん、松山馨太さんらと共に話し合い、歩んできた経験は代えがたい有益な実践経験となっている。またその交流から広がる他校MBAの方々との交流や、そこでの出会いから生まれた事業がグローバルに広がっていく様子を目の当たりにすると、それらはまさにピアエフェクトの成果の賜物だと感じている。WBSヘルスケア部にて共に幹事をしてくれている穴吹美恵さん、池田功さん、池田寿さん、大角知也さん、田中聖子さんにも非常に感謝している。特に彼ら彼女らの段取り力、イベント運営能力は極めて高く、その仕事ぶりからも大変学ばせてもらっている。大角さんとはゼミ、ライフプロジェクト、ヘルスケア部で全て一緒に活動しており、半端ないネットワーキング力にいつも感嘆している。今後も是非一緒に頑張っていきたい。また、非公認グループで深酒部という素敵な会のコアメンバーに入れてもらっている。非常に多くの同級生が参加してくれており、中でもオーガナイザーの岡本勝裕さん、杵淵裕介さん、林弘成さんは優秀なだけでなく彼らの心温かさが皆の居場所を作ってくれている。正のピアエフェクトが生じているこれらコミュニティに深く感謝したい。
 以上、私のピアエフェクト探索癖による自身の変遷を軸に、その結果現在広がっていっているコミュニティのご紹介とさせて頂いた。
 今後益々のお互いの成長と相乗効果を目指して頑張っていきたい。


次回の更新は7月5日(金)に行います。