[ STE Relay Column 027]
土肥 淳子 「講義TA業務から学んだこと – 学びの深め方とLearning Communityの構築 – 」

土肥 淳子 / SBエナジー株式会社 

[プロフィール]SBエナジー株式会社にて、情報システム部と広報部を兼務。企業HP・会社案内などの制作、運営のほか、情報セキュリティ管理などを担当。
2006年慶應義塾大学文学部卒。独立系システムインテグレーターにてSEとしてシステム導入支援やツール開発を行った後、BtoBプロモーションを経験。2014年にSBエナジーへ転職後は、主に広報業務を担当。2016年から早稲田大学ビジネススクール(夜間主総合コース)に入学し、根来龍之ゼミに所属。2018年に同修了。

牧さんからのTA打診のご連絡は突然でした。

きっかけはWBS現役・修了生の交流イベントであるWBSサマーフェスに牧さんが参加されていて、私は幹事メンバーとして運営担当を行っていたことだったかと思います。
在学中から牧さんの講義には興味があり、この突然のご連絡に対しては即答で飛びつきました。

一緒に講義TAを担当した川村聡宏さんとは、2016年同期入学で4月の最初の講義でグループワークを行ったことがあるのですが、卒業後に再び仕事ができ、2年前からの成長や変わらない部分も感じることができて楽しかったです。
講義TAの役割分担については、牧さんからの指示もありましたが、お互いの性格を知っているからこそ自然に動けた部分もあったかと思います。

講義TA業務について
牧さんのTOM講義の特徴と言えば、毎週のケーススタディ2本と、大量の配布資料、講義後の懇親会などが挙がると思います。
配布資料について、特に第1回目の講義ではダンボール6箱分の資材・資料があり、台車でなければ到底運ぶことができない量に驚きました。その後も配布資料がダンボール2箱以上あるのが基本だったため、ある時ダンボール1箱だけだった際は、印刷物に不足があるのではないかと心配になるほどでした。
ケーススタディは事前課題もあるため、学生にとってはハードな講義のひとつであったと思います。

牧さんのFacebook投稿から、相当準備をされて講義に臨まれていることは感じていましたが、今回TAとして講義に携わったことで、実際にかなり綿密な準備がされていることを改めて認識しました。
講義の各回で、どんな学びを目的とするのか、講義進行のおおよその時間、学生に質問するポイント、対する学生からの発言まで想定した講義アジェンダを牧さんが用意しているのが驚きでした。他の先生方もおそらくそれぞれのやり方で準備されているのだろうと思うのですが、明確に文章化されたものを拝見できたのは貴重な機会だったと思います。講義内容の定着や、理解を深めるためのしかけを講義の要所に意識的にめぐらせてくれていることがよくわかる資料でした。

牧さんがある時facebookに書き込み、講義後の懇親会でも話していた言葉に、Surface Learning, Deep Learning, Strategic Learning があります。

“Surface Learningとは授業で扱うコンテンツ、最低限だけ学ぶこと。キーワードは覚えても、その意味は深く理解していないし、キーワード同士の関係も理解していない。
Deep Learningとは授業で扱うコンテンツのキーワードの深い意味、相互の関係などを体系的に理解して知識にしていくということ。
そして、Strategic Learningは、その授業で一番良い成績を取るために必要なことをうまく学ぶこと。”(https://www.facebook.com/plugins/post.php?href=https%3A%2F%2Fwww.facebook.com%2Fkanetaka%2Fposts%2F10157138030406189)

私はWBS在学当時、Strategic Learning をするような余裕はまったくなかったのですが、自分の学びが表層的になっていないかということだけは常に引っかかっていました。
牧さんは Strategic Learning をしてしまう学生を気にされていたようですが、一方でSurface Learning からDeep Learningに学びを深めることも案外難しいように思います。
WBSの学生はDeep Learningの仕方を自然と身に着けている人も多いのかもしれませんが、一般には暗黙知のまま、日常では共同化することも難しい部類の知識かと思います。私はといえば、まずそもそも理解を深めるのに再現性のある方法があるという発想を持っていませんでした。

講義では前週に学んだことの実践報告の時間を設けたり、講義全体の流れにも意味があったりと、さまざまな工夫があり、学び方にも方法論があるということに気づかされました。
また、この講義で学んでいたのは学生だけでなく、牧さんもふり返りを常に行っていて、全15回の講義中も毎回のように出席シートの提出方法や、資料配布方法、ホワイトボードの使い方など、さまざまな手順の見直しがされていました。
TAとしては見直しに対応するのも気を遣う作業だったのですが、受講者がハイレベルな議論を活発に行っているのを間近で見られるのがやりがいでした。
これだけ物事を学ぶということに意識して接することができたのは、非常に貴重な経験だったと思います。

卒業後のWBSとの関わり、Learning Communityについて
講義TAにお声がけいただいたきっかけでもあるのですが、私はWBSを卒業してからもWBS稲門会の幹事団メンバーとして、現幹事長である芦澤智之さん(WBS 2013年修了)たちとWBS卒業生・現役生向けのイベントであるサマーフェスの運営に携わってきました。
また、恩師である根来先生をはじめ、根来ゼミの先輩や同期である諸星綾子さん、川上裕之さん、岡本匡弘さん、杉本昌志さんたちと、WBS卒業生をゲスト講師とするセミナーシリーズ「躍動する企業人」の運営にも関わっています。
こうした活動をするモチベーションは、運営の実践から学びたいという個人的な思いのほかに、WBSで感じたさまざまなバックグラウンドをもった人たちとの交流のおもしろさ、大切さだったりします。

ビジネススクールで学ぶメリットは、多くの人が言うように、各業界、各職種でさまざまな経験を積んだ人たちとのネットワークが広がっていくことにあると思います。
WBS卒業生として、自らビジネスで学びを実践し活躍することが母校への何よりの貢献だと思いますが、ビジネスにおいて活躍するためには様々な人的ネットワークを持っていることも重要な要素であるということをWBSの講義を通して学びました。
これからも第一線で活躍するビジネスパーソンたちが交流する機会を設けることで、イノベーションが生れるきっかけの一助になれればよいと考えています。

 


次回の更新は2月1日(金)に行います。次回はのHiroki Matsudaさんによるコラムです。