[ STE Relay Column : Narratives 186]
戸部 龍一郎「broadened my horizon ―2022年度牧ゼミ春学期活動を通して―」

戸部 龍一郎/早稲田大学大学院経営管理研究科

[プロフィール]千葉県出身。2007年大学卒業。同年建設会社に入社し、本社経営企画部、支店管理部に所属。2017年シンクタンクに入社し、官公庁のPMO事業(Project Management Office)に参画している。2021年4月、早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)入学。2022年度牧ゼミ5期生。趣味はゴルフ、サッカー、犬の散歩。学生時代にお笑い活動をしており、M1での1回戦突破経験が最大の自慢。

 2022年度牧ゼミ春学期活動について執筆するにあたり、妻に「この4、5か月で変わったところある?」と聞いてみたところ、「視野が広がって、他人の意見を受け止められるようになったんじゃない?」とのこと。家庭内での振る舞いに限らず、ちょっとした意見交換でもそう感じるらしい。その原因は牧ゼミでの活動にあるのかも、という仮定のもと、春学期のゼミ活動を振り返りたい。

牧さんとの出会い
 牧ゼミでの活動を振り返る前に、牧さんとの出会いに触れたい。私と牧さんとの出会いはWBS入学試験時の面接に遡る。入学後の研究テーマに関する質疑応答をした後、牧さんから「あなたの研究テーマは実務に近すぎるので変えた方が良い。他に興味あるテーマは何か?」と聞かれた。研究テーマの代案など用意しておらず非常に焦った記憶があり、何と回答したか覚えていない(研究テーマの代案を即答できる受験生はほぼいないだろう)。その強烈な記憶を持ったまま入学し、元々興味のあった分野であるLab to Market(大学が持つ研究シーズのビジネス化という内容の授業)を履修することになった。履修時に「面接のときの先生だ」と思い出したが、牧さんの授業運営のもと、学生自ら自然と企画案の検討、文献調査、ヒアリング、プレゼンを行うことができ、最も学びの多い授業であった。「最も」というのは今も変わらない。そうした強烈な印象が動機となり、牧ゼミの門をたたくこととなった。

ゼミ活動
 まず驚かされたのは活動内容の深さ、濃さである。牧ゼミは3月からバリバリ活動し、4期生(1期先輩)からのレクチャー(統計解析ソフトStataやアンケート作成・分析ツールQualtrics)を複数回行い、また、慶應義塾大学SFC研究所の松澤上席所員によるケースメソッド教授法も行われた。「あれ、今春休みじゃなかったっけ」と思いつつ、Stataを現在利用していることや、「ケースをファシリテートできるようになりたい」という5期生意見を鑑みると、4期生や松澤先生に感謝である。4期生からレクがあったということは来年(2023年)3月に後輩にレクできるのか心配になったが、これからの修論の頑張り次第と思っている。
 4月にはスタディ・ツアーとして東北地方に行った。石巻南浜津波復興祈念公園では、震災の記憶と教訓、国内外に向けた復興に対する強い意志を感じた。オンラインでは体感することができないものであり、直接訪問することの価値を再認識した。ゲストの方々として、石巻で街づくりを行う苅谷さん(株式会社街づくりまんぼう)、東北大学 福嶋教授(地域企業論)、企業支援を行う竹井さん(MAKOTOグループ)にお会いし、東北地方を盛り上げる熱量を肌で感じた。
 その後のゼミ活動としては、各自の研究テーマの検討や先行研究を始めとして、自分自身、また5期生同士、何に興味があるのか、どういう人間なのかを分析・共有する作業を行った。そのツールとしては、エベレスト(ハーバード大学のケース)、SCARF、Enneagramを利用し、自分の知らなかった自分の側面を指摘されたり、強みと弱みが表裏一体であることを実感した。チームビルディングとして有効であるとともに、人材・組織といったビジネス分野での思考にも役立つものであった。
また、多数のゲストスピーカーにも恵まれた。株式会社FLUXの永井CEO、Sozo Venturesの松田さん、早稲田大学創造理工学部の大森准教授、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科の今泉特任准教授、損害保険ジャパン株式会社の高木課長代理、スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版共同発起人の井上さん、HISHOH Biopharmaの櫻井社長にご講演いただいた。感想や学びはそれぞれ異なる部分はあるものの、共通しているのは、自分が今まで固定観念が強く、失敗したくない、悪い意味で日系サラリーマンの典型であるように感じた。今までは自分が引くライン(基準)の上か下か、白か黒かといった考え方が強かったように思う。しかし、ゼミ活動の中で、同期やゲストスピーカーとの交流を通して、視野が広がり(broadened my horizon)、より俯瞰的に人や物事を見ることができるようになったと感じる。

最後に
 ゼミ活動において、ゲストスピーカーやゼミのOB・OGの方々等とのつながりの機会を提供いただいた牧さんにまず感謝したい。ただ、本当の恩返しは、感謝することだけではなく、そのつながりを活かして今後新たな活動を行うことであると思う。修論のみならず、WBS卒業後の活動も含め、さらに俯瞰的・多面的な視点で人や物事を見たいと思う。

                                           以上


次回の更新は11月4日(金)に行います。