[ STE Relay Column : Narratives 178]
牛 超 「自信が溢れている一年生のあなたへ」

牛 超(ギュウ チョウ) / 早稲田大学経営管理研究科

[プロフィール]中国山東省出身。2012年来日し、広島大学大学院(システム最適化)卒業後、本田技術研究所に入社。
入社当初は、数学系のバックグラウンドをしかして、当時世界発の前輪駆動10速AT、スーパーハンドリングSH-AWDシステムなどの電子制御開発を中心に従事。技術者として商品開発をやっていくうち、視野が段々狭くなっていく事が気づき、本業以外の社内活動を精力的に活動した末、戦略企画室に異動するチャンスを掴めた。現在は戦略企画や技術の社会実装を担当中。更なる高みを目指して、2022年4月早稲田ビジネススクール夜間主プロファイナンス専修コースに入学。

 夜間主プロファイナンス専修M1の牛超(ギュウ チョウ)と申します。2022年春Q「エビデンス・ベースド・マネジメント」(EBM)の履修者であり、こちらのSTE Relay Columnに参加させていただきました。今後、牧先生の授業に参加したい方に個人的な体験と感想を共有出来たら、幸いです。

■自身の価値観
 “やればできる!”、こんなシンプルな座右の銘で生きてきた人間であり、冷静に考えると、過剰の自信家でよっぽど嫌な奴だったなと思います。
 そんな奴は、その信念を持ってるだけで、様々な難関を乗り越えてきました。2年間コースの日本語学校を半年で卒業し、複数の大学院を合格できました。就活中、バイク事故で足を折れて、杖で全国の面接を飛び回って、第一希望を含めた複数社の内定を獲得できました。新人には不可能と言われていた“安全機能開発”は、一年目でありながら、一人で量産レベルまで持っていく事が出来ました。
 しかし、WBSに来て、いきなり、EBMの授業で“壁”にぶつかる事になり、挫折を味わう事になりました。

■履修ハードル
 初めて牧先生に出会ったのは、入学のDXオリエンテーションだったです。テキパキの司会ぶりに印象的で、この先生とお話ししたいなと思い、迷わず履修申請をしました。しかし、本登録前に、「履修者への手紙」が来て、本当に履修するかを真剣に悩みました。もちろん、“やればできる”と思う反面、4月から職場では大規模の組織変更があり、学校と仕事は同じように“慣れ”が必要で、EBMについて行ける時間とエネルギーがあるかを凄く疑問を思っていました。そこで、偶然にYoutubeで見た入山先生の動画で、一番感謝しているのは慶応の木村福生先生のゼミで論文を読みまくった時期で、それで学術の“フロンティア”を知る事となり、将来のキャリアにも影響されたとの話でした。入山さんの話の中で出てきた“社会学”、“英語”、“最新最先端の学術論文”というのはEBMのキーワードと一緒だった事を見て、履修を決めました。
 
■「社会学」と「自然科学」の共通と違い、先入観との戦い
 自然科学領域で勉強や仕事をしてきた自分にとっては、論文の中に出てきた数式モデルは複雑ではなかったです。が、共通していたのはその数式のみでした。論文の実験設計の出発点、そして実験の設計の理解に苦戦していました。
 最初の論部に出てきたPeer effectというのは、理系人間の私だと考えた事もないような理論でした。その後の中間報告の有無と学術成果の関係性の話で、R&D領域で長く働いた自分によっては当たり前の話過ぎて、先入観との戦いで、論文の妥当性についての議論ですらできなかったです。また、成果主義とイノベーションの論文も印象が深く、論文のランダム化の意義と自分の価値観のズレがあり、自分の思い込みから抜け出すのは時間がかかりまして、挫折してしまいました。
 お分かりいただけたと思うが、EBMで取り扱っている論文は、数式ベースの証明などは理系出身者にとってはハードルではなく、仮説と実験設計そして結果は合理的に繋がっているかの判断であり、実験に存在している外的要因と内的要因のバイアス排除をしっかりとできているかの判断は真のハードルであります。理系出身者の私は、とある既存の理論ベースに応用と深化を行っているが、その既存の理論は理系出身者にとっては“常識”であり“当たり前”になりますが、EBMの授業はある意味その“当たり前”は本当に“当たり前”なのかなぜ当たり前なのかを再認識させる思考のプロセスでした。そのプロセスは自分にとっては、そう簡単に乗り越えるものではなかったです。。

■授業自体のPeer effect
 春Qは同時に別の授業も履修していますが、EBM程授業中の密度が高い授業がなかったです。その理由は、牧先生の巧み的なファシリテーションと授業自体のマインドセットによるものであり、他のどんな授業よりも時間を費やしてきた皆様だからこそ、その努力を全て授業内の発言に注いでいました。結果、授業に参加された皆様、全員レベル高い発言をされており、それにレベルにキャッチしようすると更に深い発想ができるように努力するみたいな“探索”と“深化”の繰り返しが授業内外で起きていました。気が付けば、あっという間に辛くて楽しい2ヶ月を過ごす事が出来ました。

 終わってから、改めて感じたのは、こんな根性がない自分も、それなりに頑張って、何とか授業にしがみつく事ができたので、“やればできた”という新たな自信の源を見つける事が出来た気がします。変わるものは問題を見る視点であり、変わらないものは自分自身の価値観であります。

 EBMはどっちかというとM2に向けの授業で、M1取ってもいいけど少し難しいかもよと初回授業に牧先生が仰っていたのですが、終わってみれば、むしろM1の学生に向けてとるべき授業であります。M1にとってはゼミ活動がない中、春QでEBMを受講して、これからのビジネススクールの過ごし方を早期にイメージ作りできます。ただ、負荷が高い事もあり、そういう意味では、自信があふれているM1にぜひお勧めしたい授業です。
自分が仕事と別の授業の都合で牧先生が設けて頂いた水曜日の“オフィスアワー”に参加できなかった事が唯一な心残りでして、もう少し“牧ワールドを身近に体験したかったです。(笑)
最後に、牧先生そしてEBMの授業に出会って、本当によかったです。本当にありがとうございました。


次回の更新は8月5日(金)に行います。