[ STE Relay Column : Narratives 152 ]
亀﨑 允啓「Lab to Marketへの期待~研究初期段階からのMarketへの意識~」

亀﨑允啓 / 早稲田大学 理工学術院 理工学術院総合研究所 主任研究員(研究院准教授)

[プロフィール]2010年早稲田大学大学院創造理工学研究科総合機械工学専攻博士後期課程修了,博士(工学)取得.2010年~2012年早稲田大学創造理工学部総合機械工学科助手,2013年~2017年早稲田大学理工学術院総合研究所次席研究員,2018年~早稲田大学理工学術院総合研究所主任研究員.2017年~2021年まで,JSTさきがけ「社会デザイン領域」研究者.これまでに,人と高度知能機械との界面設計を基軸に,人間共存ロボット,建設ロボット,災害対応ロボット,ドライビングインタフェース,パーソナルモビリティ等の研究開発に従事.最近では,機能性材料を用いた新しいロボットシステムの構成法に関する研究を鋭意展開している.

 2021年のLab to Marketには、「人間共存型の自律移動ロボット」という技術シーズを提供し、WBSの学生の方とこの技術シーズからニーズ発掘するというところを一緒に取り組ませていただきました。

 この技術シーズは、人ごみの中での案内ロボットとしての使用や物資の運搬ロボットとして使用することは、研究当初から念頭に置いていました。Lab to Marketの中で学生の方とディスカッションをし、他にも、病院の中でのロボットとして使用したり、パーソナルモビリティとして電動車椅子にも活用できるというアイディアが出てきました
 また、活用する場面を想定した上で、実際にニーズがどれくらいあるのか、そして、利用者に対する心理的な障壁なども学生の方に調べて頂きました。

 技術シーズというのは、社会実装を見据えて、実際にサービスを利用する人や、サービスを提供する当事者の気持ちも踏まえる必要があると感じています。この部分まできっちりと検討をすることにより、研究のディレクション自体も定まっていくと感じています。WBSの学生との対話を通じて、このことを力強く感じました。
 一方で、ディスカッションの初めでシーズの技術的な部分を学生側にしっかりと理解してもらうというのが、その後のディスカッションを有意義なものにするために必要不可欠であると感じました。やはり技術シーズをどのように活用できるかを検討する際には、そのシーズを如何に適切に理解するかというのが重要です。今回のLab to Marketでは当初の技術シーズのブリーフィングのところで、あまり意思疎通が出来る時間を取らなかったためシーズの重要性を学生の方に理解していただくところに時間がかかったなと少し思うところがありました。
また、研究者自身が想定しているニーズや社会実装の方法について、ビジネス側の視点から、「それは全然面白くないんじゃない」というような、突っ込んだ意見をもらう事も重要なのではと感じています。実際にWBSの学生は遠慮をしてなのか、そこまで突っ込んだ意見をもらう事はなかったです。

 研究者の視点とは違う、ビジネス側から見た技術シーズの評価というのは普段簡単に得られるものではないです。

 ですので、Lab to Marketでこのような取り組みをどんどん続けてもらえれば、理工系の研究開発とビジネスの接続部分がもっと強固になると感じています。それは、早稲田大学としてのインテンシティーが上がっていくにつながります。

 私自身も、このような貴重な機会を今後も活用していきたいと思っていますので、引き続きよろしくお願い致します。


次回の更新は11月26日(金)に行います。